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初期研修制度の問題点と改善案を元女医が考えてみた

rinrin
こんにちは、元女医ライターのrinrin(@Drrinrin1)です。

医学部を卒業し、医師免許を取得したばかりの医師は、大半がその後二年間の『初期研修医』へと進むことになります。

今回は、その初期研修制度について、私なりの意見をまとめてみました。

 

初期研修制度とは

初期研修制度
医師免許取得後、2年間は専門科に所属せず、各診療科を回り(ローテート)、全診療科についての理解を深めるための期間とする制度。『スーパーローテート制度』とも呼ばれている。修了した医師には、『修了登録証』が授与される。

 

医学生は、だいたい4年生から5年生、遅くとも6年生の春頃までには、

将来の研修先を見据え、病院見学などに勤しむことになります。

 

初期研修制度の問題点

初期研修制度は、『ジェネラリスト』すなわち、『全ての診療科の診察ができる、何でも全般的に診れる医師の養成』を目的として整えられた制度であり、

現在は、必修項目や到達基準なども細かく指定されています。

しかし、実際に初期研修制度下において臨床研修を受けてきた身においては、この目的と実態が少し一致しない点があるように思えます。

 

rinrin
以下に、実際に初期研修を受けた立場として、私が問題に感じた点を挙げていきます。

 

初期研修制度の問題点①:各診療科を回る期間が短い

一つ目は、『各診療科を回る期間が短い』という点です。

現在の必修科目は、『内科』が6ヶ月、『救急医療』が3ヶ月、『地域医療』が1ヶ月とされています。

実際に回った所感として、

 

rinrin
この期間では、目的とされる『ジェネラリスト』の育成は難しいのでは…

 

と思います。

 

内科と一口に言っても、『血液内科』『循環器内科』『消化器内科』『代謝内科』『内分泌内科』『膠原病内科』『呼吸内科』『神経内科』『腎臓内科』など、数多くの科があります。

現在の研修制度では、どれでもいいので『内科』に6ヶ月在籍すれば良いことになっているため、

たとえば上記のような各内科の中から6つを選び、それぞれに1ヶ月間ずつ滞在する形でもOKということになります。

1ヶ月だけの在籍期間だと、

仕事に関しては本当に表面上の触りだけを学ぶことになり、科によっては、1人の患者さんを入院から退院まで見届けることさえ難しいケースもあります。

 

地域医療に関しても同様で、ただの『お客様状態』で研修が終わってしまう科もあり、せっかく時間をかけて研修を行うのに、大変もったいないことだと思います。

 

初期研修制度の問題点②:研修達成の到達基準が低い

現在の研修医制度では、到達基準が設けられてはいますが、その基準が低いと感じるものが多いです。

 

たとえば、選択必修科目である『精神科』の到達基準の一つに、『統合失調症』という項目があります。

これは、精神科研修中に、統合失調症患者さんを1人受け持ち、サマリー(入院患者さんの経過のまとめ)を書いてしまえば、『到達』と判定されてしまいます。

1人の患者さんを受け持っただけでは、その疾患についてきちんと理解したとは言えないと思うのですが、

そのように判定されてしまうのです。

 

同様に、気管挿管などの手技についても、一度『行ったことがある』というだけで『到達』と判定されてしまうため、

研修医の中には、勉学のためではなく、『いかに到達目標を効率よくクリアしていくか』だけを重点的に科を選ぶ人もいました。

 

初期研修制度の問題点③:研修到達基準の判定を行うのが、研修医自身である

研修中は、研修到達基準の判定が行われるのですが、それは『自己評価』という形で研修医自身の手によって行われ、

後から指導医によってチェックされるという形です。

 

しかし、私の経験上、多忙な指導医ほど、このチェックはただ研修医自身の自己評価をなぞるのみで、

実際には研修医自身の自己評価が、そのまま到達基準の判定とされてしまうことがほとんどでした。

『研修』と銘打つからには、その評価は第三者によってしっかり行われるシステムが確立して欲しいなぁと、渦中にいる者としては思いました。

 

初期研修制度の問題点④:専門科の勉強をスタートする時期が遅れる

初期研修には、『内科』、『救急』、『地域医療』という必修科目と、『外科』、『麻酔科』、『精神科』、『産婦人科』、『小児科』という、選択必修科目があります。

必修科目は、その名の通り『必ず履修しなければいけない科目』です。

選択必修科目は、『挙げられた5つの科のうち、2つは必ず履修しなければいけない』という科目です。

 

必修科目期間は、内科の6ヶ月、救急の3ヶ月、地域医療の1ヶ月と、選択必修2科目をそれぞれ1ヵ月ずつ履修したとして、

合計12ヶ月あります。

つまり、研修期間中の1年間は、将来進む科の希望が何科であるに関わらず、必修科目を学ばなければいけません。

 

専門科がまだ決まっていない人ならばよいですが、専門科がはっきりと決まっている人にとっては、

将来進む診療科が学ぶ時期が遅くなることは、非常に大きな問題です。

専門医制度も改訂されて、初期研修医終了後でないと専門医志向登録さえもできなくなってしまったため、

専門医の取得も、従来より2年遅れてしまうことになりました。

 

初期研修制度の問題点⑤:病院によって研修の質に差がある

初期研修は、きちんと研修施設として認定された病院でしか行われていません。

しかし、その研修の質は、病院によってかなりの差があります。

 

『医療のレベルに差がある』という意味ではありません。

訪れる患者さんの疾患の種類に、病院によって、大きな違いがあるのです。

 

大学病院を研修先に選んだ場合は、何百人に1人と言った珍しい症例の方が多くなりますし、

反対に市中病院を研修先に選んだ場合は、日常よく見かける疾患を診る機会が多くなります。

しかし、上述の『到達基準』が緩いため、どちらの病院で研修しても、『研修到達目標は達成した医師』とされてしまいます

 

初期研修制度の問題点⑥:『地域医療』の定義が曖昧

地域医療というと、みなさんどのようなイメージを持たれるでしょうか。

私は、病院の数が少ない地域で、その地域にある基幹病院として稼動し、設備やスタッフが十分に整わない中でも、可能な限り患者さんに適切な医療を提供する病院であると思っていました。

 

しかし、実際に『地域医療研修』を行っている病院は、

島や過疎地などもあるのですが、

 

rinrin
これはどの辺が『地域』医療なんだ??

 

と首を傾げたくなるほど、『都会』な病院も、地域医療研修先に指定されているのです。

 

さすがに大学病院ほどまでとは言いませんが、最新の設備も機械もきちんと揃っていて、

通常と変わらない診療を行い、

 

ある研修医
なんだか全然、『地域医療』って感じがしなかった…

 

と言っている研修医もいました。

 

履修項目に『地域医療』を掲げるからには、そこにはある一定の基準が必要だと思います。

 

初期研修医制度の変遷

初期研修医制度というのは、実は2004年に大幅に改定され、

さらに2010年にまた改定が加えられています。

 

初期研修医制度の変遷①:2004年の改定

2004年、それまで卒後は各診療科に所属して専門科の勉強をスタートしていたのが、

『ジェネラリスト養成』の名目の元、

現在のスーパーローテート制に移行しました。

この頃の制度では、今よりもさらに専門科以外の必修科目が多く、最低でも初期研修中の1年4ヶ月は、必修科目の履修期間に当てられていました。

 

初期研修医制度の変遷②:2010年の改定

専門科の勉強が遅れることと、結果として入局者数の確保に苦慮した大学側からの要請を受けて、2010年に、現行の研修制度がスタートしました。

現行の研修制度に改定されたことで、専門科の勉強は早く始められるようになりましたが、

当初の目的である『ジェネラリスト育成』からは遠のいたのではないかという印象があります。

 

初期研修医制度はいまだに発展途上

現在の研修医制度は、まだ発展途上であると思います。

当初の目標であるジェネラリスト育成、

『早く専門科の勉強をしたい(させたい)』という現場の医師の声、

折衷案のような現行制度ですが、今の状態ではどっちつかずになってしまっていて、

とても中途半端であるように思うからです。

 

初期研修制度はこう改善すべき

現行の制度では、すでに専門科を決定している人は、1年間の必修期間は、何となく『流し』でやっている研修医も多いです。

そういう人は、大学病院を研修先に選択し、

とりあえず必修科目と到達目標だけをクリアしていくような研修を行い、

残りの1年間で専門科に所属しています。

これでは、当初の目標であるジェネラリストにはほど遠いのが現状です。

 

rinrin
この現状を改善するための対策を、個人的な意見として述べます。

 

初期研修制度の改善案①:1年目は市中病院で研修を行う

まず、1年間の必修期間について、

その研修先は大学病院ではなく、救急受け入れも行っている地域の基幹病院にすべきだと思います。

ジェネラリスト=『何でも診れる医師』の養成を目的と考えたとき、

やはり大切なのは、『日常よく見る疾患』であり、

その中の重篤な疾患をいかにみきわめ、必要があれば専門的な病院に送ることを判断するという『目』が大切となります。

 

その研修のためには、もともと診断がついた状態で患者さんが来院する場合が多い大学病院より、市中病院の方が望ましいと考えます。

 

初期研修制度の改善案②:必修科目の『内科』を『総合内科』に変える

そして、その1年目の必修期間は、

『循環器』や『消化器』などの、疾患が限定された内科ではなく、どんな疾患も総合的に診れるよう、『総合内科』『一般内科』で行うべきと思います。

患者さんを各診療科に適切に振り分けることができてこそのジェネラリストなので、

その目を養うためにも、入り口のところで患者さんの疾患が限定されないような科での研修が望ましいです。

 

初期研修制度の改善案③:『精神科』と『産婦人科』を必修にする

また、ジェネラリストを謳うならば、『精神科』『産婦人科』は、やはり必修科目に戻すべきなのではないかと思います。

これらは、元々は必修科目でした。

 

ストレスの多い現代社会では、どの科も、精神疾患を患った人が受診する可能性があります。

また、妊婦さんも同様です。

『精神疾患だから』『妊婦さんだから』診れないなんていう病院はありません。

rinrin
この2つにおいては、どの医師も基本的な知識は有しておかないといけないと思います。

 

初期研修制度の改善案④:2年目から専門医志向登録できるようにする

また、専門科が決まっている人に関しては、2年目から専門医志向登録できるようにすべきと思います。

現在の制度では、どの科においても、専門医取得が従来よりも2年遅れます。

2年目から専門科に的を絞って研修を行っている医師にとっては、以前と受けているカリキュラムは変わらないのに、

専門医取得が遅れてしまう現状は、大変厄介なものです。

 

特に女医に関しては、取得する専門科にもよりますが、

20代後半から30代前半という時期に、結婚出産の時期が2年ずれてしまうというのは、非常に大きな問題です。

この年頃の女性にとって、2年という期間はとても長いものです。

ジェネラリスト育成という目標がある以上、1年間は仕方ないですが、

 

rinrin
2年目には専門医志向登録できるようになればいいのに…

 

と、渦中にいる間はずっと思っていました。

 

まとめ

初期研修制度について、私の考えを述べました。

現行の制度は現場の声を受けて改善されたものですが、

目標達成のためには、まだまだ改善の余地がある制度です。

 

現場にも色々な考えの人がいて、

ある医師
耳鼻科や眼科で開業した人がお産を見ることなんてないのだから、産婦人科研修は要らない

と言う医師や、

ある医師
ジェネラリストなんて2年でできるわけないのだから、元の制度に戻したほうがいい

と言う医師もいます。

 

しかし、医師である以上、『その科だけしか診れない』というのはあまりに情けないため、

専門科ほどではなくても、どの疾患においても知識は有しておかないといけないと思います。

そのための『ジェネラリスト育成』という目標ですが、なかなか理想と現実の解離を埋めるのは難しいと、実際渦中にいたからこそ実感しています。

 

rinrin
これから研修を行う若い医師が、少しでも実りある研修生活を送れますよう願っています。