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東京医科大不正入試問題の本質を元女医が考察してみた

rinrin
こんにちは、元女医ライターのrinrin(@Drrinrin1)です。

 

今年の8月に発覚した東京医科大学の不正入試問題。

おそらく女医ならば、どんな立場の人でも、みんな何かしら思うところのあった問題なのではないかと思います。

今回は、この問題について、私なりの考えをまとめてみました。

 

東京医科大不正入試問題とは

東京医科大学不正入試問題とは
東京医科大学の入学試験で、女子生徒や多浪生の得点を不当に操作し、本来であれば合格だった生徒を不合格にしていたという問題。今年8月に発覚したが、過去10年以上にわたって行われてきたと言われている。

 

不当に不合格とされた女子生徒が受験料の返還や慰謝料を要求したりなどして、

発覚から数ヶ月が経過した今でも、時折ニュースなどで扱われている問題です。

 

東京医科大不正入試問題に対する現場医師の声

ニュースなどで取り沙汰されている医師の声は、集計したメディアによってばらつきがありますが、

私の周囲の女医たちの声は、概ね以下のようなものでした。

 

許せない女子生徒の気持ちは、同じ女性として十分理解できる。でも、現場の状況を考えると、入試で差別を行うこと自体は、ある意味仕方が無いこととも言える。

 

もちろん、全員が全員このような意見だったわけではありませんが、大半がそうでした。

 

東京医科大不正入試問題はとても根が深い

この問題は、とても根が深いものです。

少なくとも、一医大だけの問題ではありません。

深く掘り下げると、社会におけるジェンダー論にまで発展していく問題なのですが、あくまで『一医大の不正問題』として大きく取り扱っているメディアが多い印象です。

 

rinrin
これから、この問題から見えてくる課題を、一つずつ掘り下げていきます。

 

東京医科大不正入試問題から見えてくる課題①:医師の過剰労働問題

課題の一つ目は、『勤務医が極めて過酷な労働条件で働いていること』にあります。

極めて過酷とはどのようなことかと言うと、

 

  • 時間外労働当たり前(1日15時間以上勤務など)
  • 休日呼び出し当たり前
  • 当直翌日も通常通り業務をこなさなければならない
  • 3日間病院に寝泊りとかざら

 

という感じです。

中にはこういう企業もあるかもしれませんが、本当にブラックな勤務体系で、医師は働いています。

体力的に男性より劣る女性には不向きな仕事であると、現場が肌で感じている節もあります。

 

東京医科大不正入試問題から見えてくる課題②:家事育児を女性が行うという風潮

二つ目の課題は、家事育児を主に女性が行うことが『当たり前』とされている風潮です。

これは医療界に留まらない話ですが、例えば我が家のように障害児が生まれたり、家庭内に要介護者がいる場合、

 

奥さんは大変だね

 

という会話がなされると思います。

なぜ、家庭内における大変なことなのに、『奥さん』(=女性)限定になってしまうのか。

 

それは、『家庭内の問題には、女性が主に取り組むべきである』という、

無意識の男女差別、ジェンダーの思い込みが、私たちの中に深く根付いているからなのです。

この問題は一朝一夕で築き上げられたものではないため、一朝一夕に解決するのは非常に困難です。

 

東京医科大不正入試問題から見えてくる課題③:現場における女医差別

医療現場では、以前から女医への差別が行われてきました。

大学病院などでは、医局員の上に役付きの『医員』(通常スタッフと言われる)というポジションがあります。

『助教』『講師』『准教授』などのポジションがそれにあたりますが、これらは非常勤扱いとなっている他の医局員に比べて、給与面での待遇がよいものです。

本来、女性が役付きになってはいけないという決まりはありませんが、大抵の医局では、講師以上は、ほとんど男性医師で占められるという現状があります。

 

私のようにドロップアウトした者に役職が付かないのは当然ですが、

産休明けてすぐに復帰して、ほぼ男性医師と同じように頑張っている女性医師でも同様です。

講師以上になっている女性医師が全くいないわけではありませんが、独身か子どもがいない女性医師ばかりです。

 

ひどい事例では、妊娠したというだけで、降格を命じられた女性医師もいました。

 

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現場における女性医師への差別は、いまだにとても根深いのです。

 

東京医科大不正入試問題を一旦まとめ

上述のような問題が寄せ集まった結果が、この、『東京医科大不正入試問題』なのです。

 

  • 女性は男性医師と同じように働けない
  • 現場の勤務は過酷だ
  • 過酷な勤務は男性にしかこなせない
  • そもそも女性は家事育児をするものだ
  • 家事育児でいつ抜けるか分からない女性に、重要な仕事は任せられない
  • 現場で用いるのは男性が便利だ
  • 入試の段階から男性を多めにしよう

 

と、そういう理屈です。

 

rinrin
医療界だけの問題ではないし、ましてや一医大だけの問題でもないのです。

 

東京医科大不正入試問題に対する女医自身の意識改革も必要

この問題について、他でもない女医自身が、『仕方ない』と発言していること自体が、問題の根深さを物語っています。

なぜ『仕方ない』と言えるのか。

それは、私のような女医が存在しているせいです。

 

事実現場を離れる無責任な女医がいる以上、女子が差別されるのは仕方ない

 

と、あるTVのインタビューで答えている女性医師もいました。

 

女性は仕事に対して無責任?

現場を離れる女性医師がいるのは事実です。

それは、私が身をもって体現しているのですが、

私が現場を離れた経緯には、一言では語りつくせない思いがありました。

 

 

 

決して、医師としての仕事を軽んじた結果ではなく、家庭環境がそれを許さなかったのです。

 

仕事よりも家庭を優先させたのは事実です。

しかし、そうなった原因は、『仕事に対する無責任さ』ではありません。

各家庭の事情を、各家庭だけで(主に女性のみが)全て負担しなければいけないという社会の現状が、その理由です。

 

家庭の事情で、涙を飲んで仕事を諦めている女性が、いまだにたくさんいるのです。

 

『仕方ない』なんてことは無い

この問題に対して、女性自身が『仕方ない』なんて発言していることが、私は悲しくてなりません。

本当は、仕方なくなんてないのです。

一つ一つ問題を解決していけば、男女差別の無い社会を作ることは、決して机上の空論ではないはずなのです。

 

東京医科大不正入試問題の根本を解決する

この問題は、単に女子の受験差別を無くすだけでは、何の解決にもなりません。

 

過剰な労働を強いられる医療現場の実情が変わらない以上、

女性が家事育児を行うべきという価値観が変わらない以上、

実際に各家庭だけで負担を担わないといけない社会体質が変わらない以上、

根本的な解決は難しいからです。

 

”女医が増えると、現場の負担が増える。”

”なぜなら離職する女医が多いから。”

 

では、離職する理由の根本はどこにあるのか。

そこを改善することでしか、解決はありません。

 

まとめ

東京医科大不正入試問題における、私なりの考えを書きました。

現場を離れた私が、この問題を論じるのは、あまりにもおこがましい話なのですが、泣く泣く現場を離れた立場からは、無視できないお話でした。

 

上述の降格させられた女医さんは、悔しさに泣いていましたが、

医局側は、『女性の家庭を思いやった対策である』と、むしろ降格させることが優しさであるかのように言っていました。

根強く、根深い男女差別が、この現代社会にまだ残っています。

 

rinrin
一医大だけの問題で終わらせないで欲しいと、切実に願います。